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(編集委員)
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国連の女性差別撤廃委員会は10月29日、沖縄駐留米兵による性暴力について、加害者に対する処罰と被害者への補償を日本政府に初めて勧告しました。在日米軍基地周辺で長年放置され、「魂の殺人」とも呼ばれる深刻な性暴力。是正の障害となっているのが日米地位協定です。石破茂首相は就任時の会見で地位協定の改定に言及しました。米兵による性暴力の根絶が求められます。
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オーストラリア人のキャサリン・ジェーン・フィッシャーさんは2002年4月、神奈川県横須賀市内にある米海軍横須賀基地近くで米兵によるレイプ被害に遭いました。警察に捜査を求めましたが、検察は不起訴とし、米軍も軍法会議にかけませんでした。ジェーンさんは損害賠償を求めて東京地裁に提訴。1審は加害者に慰謝料など300万円の支払いを命じましたが、既に日本を出国していました。加害者は処罰されず、賠償金の支払いからも逃れ続けています。
ジェーンさんは勧告直後に国会内で会見を開き、「(捜査機関から)『日米地位協定があるから何もできない』と言われた。米兵のレイプ事件は今も多く起きている。もう待てない」と、性暴力事件の被害者の立場から日米地位協定の改定を訴えています。
●まるで植民地
日米地位協定は、米軍人・軍属の地位などを定めた日米間の取り決め。占領終了から8年後の1960年に締結されて以来、一度も改定されていません。
地位協定は米兵が公務外で起こした刑事事件について、日本側に裁判権があると定めています。しかし、被疑者が米軍基地内にいる場合は日本側が起訴するまで、身柄を引き渡すかどうかの判断は米軍に委ねられています。加害者が基地内に逃げ込み、帰国すればなすすべがありません。
さらに、在日米将兵・軍属の裁判権については「重要な案件以外」放棄するとの日米間の密約(53年)の存在も、公文書公開で明らかになっています。多くの性暴力事件が、起訴はもちろん、十分な捜査もされないまま、闇にほうむられているのです。
会見に同席した飯島滋明名古屋学院大学教授(平和学、憲法学)は「米兵が日本で犯罪をおかしながら裁判にかけられない。これは植民地と言わざるを得ない。主権国家ではない」と批判し、不平等な日米地位協定の改定と、密約の放棄が必須と強調します。
ジャーナリストの布施祐仁さんが国に情報開示請求して得た情報によると、2013~22年の強制性交事件の日本全体の起訴率が約36%なのに対し、在日米兵は約8%に過ぎません。この差は異常です。
同じように米軍基地が国内にあるドイツやベルギーなどにも地位協定はありますが、米軍に国内法を原則適用させています。
●無策の17年間
沖縄では、昨年末以降、16歳未満の少女への性暴力をはじめ、米兵による性加害事件が相次いで明るみにでました。国連の女性差別撤廃委員会が初めて勧告した背景には、こうした深刻な事件がきちんと捜査もされず、女性の人権が踏みにじられているという、日本のNGOや市民団体の告発が後押しした、と指摘されます。
国連の拷問禁止委員会も07年、外国軍人による基地周辺の性暴力について、日本政府に改善を勧告していました。布施さんは「今回の勧告は17年間、何も状況が変わっていないことを示している。女性差別撤廃委員会の勧告を機に、米兵による性暴力をなくすための日米地位協定の改定を求めたい」。
〈写真〉ジェーンさんは会見の途中、突然、話を止め、深呼吸を繰り返し、震える体を落ち着かせようとしていた。22年前の記憶がよみがえり、恐怖で体が硬直するのだと話した(中央、10月31日、国会内)