アメリカ野球に広がる日本語だが、和製英語はダメか!?
玉木 正之
たまき・まさゆき スポーツ文化評論家,日本福祉大学客員教授。著書に『スポーツとは何か』(講談社現代新書)など多数。近刊は「真夏の甲子園はいらない 問題だらけの高校野球」(編・著、岩波ブックレット、2023年)
あるテレビ番組で、アナウンサーが、こう言った。「シーズンオフの話題は佐々木朗希投手。メジャーのストーブリーグは燃えています」
些細(ささい)なことだが、二つの英語の間違いが気になった。一つはシーズンオフ。オフシーズン(off season)が正しい英語だ。もう一つはストーヴリーグ。日本ではシーズン後のトレードやドラフト、フリーエージェント選手の話題を指すが、英語の意味は、野球ファンが寒い冬にストーヴを囲み、シーズンを振り返る話が盛りあがることを指す。
他にも日本でしか通じない野球和製英語は、フォアボール(英語はベース・オン・ボールズ)、デッドボール(英語はヒット・バイ・ピッチ)などがある。ナイター(夜間試合)は和製英語ではなく、ノーヒット・ノーラン・ゲームをノーヒッターと言うのと同様、ナイターは英語でもナイトゲームのことで使える。
が、最も面白い和製英語が、バスターだ。バッターが送りバントの構えから強打に転じる打法を日本ではバスターと呼ぶが、〃buster〃 は本来「ぶち壊し屋」「バカ騒ぎ」の意味。この言葉は「スッゴイ!」「やったぜ!」といった感嘆詞として使われる。
1963年に巨人がドジャースの春のキャンプに参加したとき、練習試合でドジャースがこのプレイを行い、ベンチの選手や観客が「オー! バスター!」と叫んだ。それで巨人のコーチや選手が、このプレイを「バスター」と呼ぶと誤解したことからこの呼び名が日本に広まったという。
最近はメジャーで多くの日本人選手が活躍し、「SANSHIN!」と叫ぶアメリカのTVアナウンサーも出る時代。しかし「シーズンオフ」「ストーヴリーグ」「バスター」などの和製英語は、やはりアメリカでは使われないかな?