暇工作の「丸選手移籍に思う」


金で動かぬ損保労働者もいる

広島カープの丸選手が25億とも30億ともいわれる巨額マネーで巨人に移籍した。

 

 日刊スポーツ紙の高原編集委員は、選手がカネで動くことを肯定しつつも「本音を言えば、丸には広島に残ってほしかったなあという気持ちを持っています。金銭面で最大となる条件を出した巨人。そこを断って金銭面では劣る広島に残留すれば、大リーグからの巨額オファーを蹴って広島に復帰したあの黒田博樹氏を再び思い出させるような出来事になったかもしれません。そうなれば広島ファンはもちろん、巨人以外のプロ野球ファンから『いいぞ。丸!』とさらに大きな人気を獲得できたような気もします」と綴った。

 

 かつてキューバの名選手だったリナレスは、多くの同僚がアメリカ大リーグの札束攻勢に負けて亡命することへの感想を求められ、「自分は祖国キューバ国民のためにプレーする」と言明し、その高潔さが尊敬の対象となった。

 

 黒田博樹氏の復帰も「だれのために投げるのか」を自分に問うた結果だったと本人は語る。

 

 やはり、カネだけでない価値観を持っている選手もいるのだ。損保社員はどうか。

 

 I氏ありき。彼は全国転勤型の「全域社員」から「地域社員」に身分変更(ダウン)したいと前代未聞の申し入れを会社に対して行った。肩書、昇進、年収等々の不利益を甘受しても人間らしい自由を選んだ。多くの経済的利益を失ったが、多くのリスペクトも得た。

 

 年収半減を覚悟で少数派労組の専従に自ら志願した社員もいた。彼が自らに問いかけたのは「だれのために、なんのために生きるのか」だった。カネの順位は低かった。

 

 保険会社は、世のため人のために尽くす仕事だ、と信じ込んで入社したが、こと志と違う現実に直面して退職、アルバイトで食いつなぎながら、被災地のボランティア活動を続けている若者がいる。久しぶりに出会った彼の目の輝きが印象的だった。

 

 プロ野球選手の法外な移籍金額は「評価、すなわち金額の多寡」「誠意=カネ」という剥き出しの経済至上主義を助長する。あまりにも大きすぎる金額ゆえに、拝金主義批判など歯牙にもかけないパワーを持っている。

 

 それでも暇は言いたい。「おいおい、なにか大切なものを忘れていや、しませんか」と。