「闇のアルバイト」受け子に聞く

家賃と食費に困り果てて…


         ジャーナリスト S・SYOJI

 


 特殊詐欺の受け子をやっている女性に会って話を聞くことができた。新宿の風俗店店長から紹介された女性で、彼女は〃闇の職安〃から、その仕事を斡旋された。

 

●報酬は5%

 

 受け子の報酬は、下ろした(だまし取った)金額の5%だった。この額が多いか、少ないか。逮捕されるリスクを考えれば、圧倒的に割の悪い仕事だろう。ATMを使ってお金を下ろす場合、上限は50万から100万円だ。指紋認証など本人確認が厳重なカードの場合100万円も下ろせるが、詐欺で得たカードで下ろせるのはせいぜい50万円。本人が限度額を変更している場合など、多くて100万円だろう。

 下準備は犯罪組織がやったとしても、カードをだまし取って、防犯カメラに映りながら最大5万円ほどにしかならない。95%は犯罪組織に〃搾取〃される。

 「今思えば、ばかみたい。でも冷静な判断なんてできなくなっていた」。彼女は闇の職安を検索した当時を振り返った。2月の頃はまだ、風俗店にも客があった。だが、3月の声を聞くころにはパタリと客足が途絶えた。そのうちに店自体が営業自粛で閉店し、店舗型ではなく、デリバリーという別のスタイルの風俗に変えてみたが、事態は好転せず。2年近く風俗店で働いていたが、貯金は50万円もなかった。休業補償もなく、貯金はどんどん目減りした。

 

●相手の老女に祖母を思い心が痛んだ

 

 「まず、家賃に困った」。けれど、家賃を集める民間業者は容赦がない。コロナ禍でも、家賃が1日遅れれば矢の催促だ。「支払いが滞ったら出て行ってもらう」と繰り返す。食費を削り家賃を支払った。6万2千円の家賃が重い。100円で買うカップ麺は、より量の多い乾麺に変わり、1玉28円のうどん……。調味料が切れて、食費の削減が限界だと思った時に、何でも良いから仕事をと、〃闇の職安〃を検索していた。

 その後は、特殊詐欺のリクルーターと連絡を取り合い、特殊詐欺の〃ルール〃をレクチャーされたのだという。「私の場合、財務省職員という設定で、白いブラウスでスーツっぽい格好で行くように指示されました」。キャッシュカードが偽造されて使われているので、封印して保管するという筋書きだった。

 不安そうな顔をした被害者の女性は80歳を超えていそうだった。自分の祖母を思い、心が痛んだがカードをすり替えた。老女の家が見えなくなる角を曲がると、転びそうになりながら、全力で走った。来た時とは別の道を。だが、途中で走るのをやめた。「だって、住宅街を全力で走るスーツ姿の女って怪し過ぎる」。あとは現金を下ろすだけだった。ここまで、彼女は一気に話した。(続く)