斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」


 

 

       有料化は「カゴパク」招いた?

 

 レジ袋が有料化されて3カ月が過ぎた。未だに慣れない。やっぱり不便だ。大の男が「マイバッグ」なんてと、買った物はむき出しのままか、カバンの中に突っ込むだけで持って帰るのが常である。

 それでもレジではモタモタしてしまう。いい年をして、万引きしているような気分に苛まれるのもめんどくさい。

 少なからぬトラブルが発生していると聞く。商品を入れたカゴを返さず、持ち去っていく「カゴパク」の横行に、スーパーやコンビニは悩まされているそうだ。

 実際、客以上に困っているのは、店員さんたちのほうだろう。レジでモタつかれれば、後続客の視線が気になるに違いない。ならばと商品の詰め込み作業を手伝ってあげている店員をよく見かけるが、客たちの「マイバッグ」がどれも清潔である保証はない。コロナ禍の続く時節柄、できれば触れたくないというのが正直なところのはずだ。

 有料化の趣旨どおり、プラスチックごみの削減につながるなら、それもこれも仕方がない、のかもしれない。とはいえ各種の報道によれば、レジ袋などプラごみ全体の1%未満でしかないという。まず改められるべきはコストパフォーマンス一辺倒の産業界や行政の姿勢ではないのか。

 そんなことを考えていたら、大手コーヒーチェーンが従来のプラスチック製カップを、11月から紙製カップに切り替えると発表した。こういう流れが定着していくのはよいことだと思う。

 ただし、レジまわりの混乱は、一方でキャッシュレス化推進の呼び水に、いや、大義名分にもされていく可能性がある。利便性や非接触のメリットを歓迎する向きもあろうが、キャッシュレス化とはイコール個々人の買い物履歴の一切を政治権力と巨大資本に見張られ続けるウルトラ監視社会の完成を意味してもいる。

 あちら立てればこちらが立たず。とかくこの世は難しい。