保険募集・イマムカシ(その4)

                    鈴木 健


               人びとの暮らしの実態と保険会社のタテマエの矛盾をカバー                                     


 現在は保険業法関連の法規を順守しなければ、代理店は解約、その他の罰則を受けなければならないが、法規が整備されるまでは、ずいぶん長い間杜撰な時代が続いた。

 その中心的な問題は、募集人が集金した保険料の入金システムが整備されていなかったことだ。
 

 保険料は個人、法人預かりで預金通帳に入金記載、台帳記載の義務があるが、その指導監督もあいまいだった。また、会社から募集人に対する保険料請求書(「代勘」)も、翌月になってから、一月遅れで、来るという仕組みだった。
 だから、保険料と募集人個人のお金の区別があいまいになる。請求書がくると、とたんに慌てふためく募集人も少なからずいたものだ。そして、それを助ける高利貸しもどきの別の募集人もいたし、契約満期票を担保に金策する募集人もでてくる。なにより、このシステムは保険料の立て替えや割引などが横行しやすいという弊害を生んだ。
 口座振替、コンビニ払いなどが日常化した今日から見れば、いかにも時代遅れだが、やはり背後には当時の社会情勢があった。例えば、農村ではコメの収穫・出荷時などにしかまとまった現金収入がない。手持ちの現金がない契約者に対しては、募集人が立て替えざるをえないという実情があったのだ。
 募集人は、人々の暮らしの実態と、保険会社のタテマエの間の矛盾を現実的にやりくりする役割を果たしてきた、といえば、少々大げさかもしれないが。