真実を知りたい…国民を代表しての「知る権利」訴訟
編集委員 前田 功
愛する夫が自殺した。何で悩んでいたかはおおよそわかっている。しかし、死を決意した詳細を知りたい。そう思うのは人間として、至極当然のことだと思う。
財務省近畿財務局の上席財産管理官だった赤木俊夫さん(享年54歳)。森友学園問題を巡る公文書改ざん事件に関与させられたことで追い詰められ、悩んだ結果、2018年3月7日、自ら命を絶った。
残された走り書きの手記には、「佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それにNOを誰もいわない。これが財務官僚王国。最後は下部がしっぽを切られる。なんて世の中だ。」と書かれている。
赤木さんの奥さんは、2年余りの間、真相を知りたいと、近畿財務局や財務省に説明を求めていった。しかし、まともに相手にされず、佐川氏は手紙を「読ませていただいた」と回答したのみ。さらに夫の死の経緯を知るために請求した行政文書は開示されはしたが、大部分が黒塗りだった。
大阪地検特捜部も、市議会議員や弁護士らからの告発を受け、国有地売却や財務省の公文書改ざん問題として捜査をした。赤木さんの手記に記された改ざんの経緯を把握しているはずだ。しかし、佐川理財局長ら関係者全員を不起訴として捜査を終えてしまった。(地検へ政権側から圧力があったのでは?あるいは忖度があったのでは?…とささやかれているが、明確な証拠は今のところ出てきていない。)
これでは真相がうやむやになってしまうとの懸念から、奥さんは2020年3月18日提訴に踏み切った。裁判は、1億1000万円余りの損害賠償を国と佐川氏に求める形となっているが、問題はカネではない。奥さんには、夫の死に関わる真相を知る権利がある。その「知る権利」を求めての訴訟だ。日本の法曹が遅れているため、こういう場合、損害賠償訴訟とするしかないのだ。
この事件は、国有財産に関する不正だから、個々の国民の損害(不当に値引きされた額が8億だったとしたら国民一人あたり8円の損害)にもかかわる。われわれ国民ひとり一人も国有財産にかかわることに何が起きていたかを知る権利がある。奥さんはこの不正によって、8円の他に夫も奪われたのだ。そういう意味で、奥さんが国民を代表して訴訟を起こしたと考えてよい。
改ざんが誰の指示で行われ、どのようなウソの国会答弁が行われたのかを、法廷で当事者に説明させる。そして、保身や忖度による判断や指示で現場の職員が苦しみ、自殺することが二度とないようにすることが目的だと、弁護団は説明している。
私たちも、自分の権利にかかわる問題として、この訴訟に取り組んでいきたい。
(署名のお願い)
赤木さんの奥さんは、真相解明のために、第三者委員会を立ち上げ「公正中立な調査」をすることを求めて、「change.org」というサイトでオンライン署名を集めています。
署名先や要請文は、グーグルなどで「私の夫、赤木俊夫がなぜ 」で検索してください。「名字」「名前」「メールアドレス」「お住まいの市町村名、郵便番号」を記入するだけでできます。読者の皆様のご協力をお願いします。