斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」
幼児に経済教育?
手元に小学館の知育学習雑誌『幼稚園』の1月号がある。わが家にその年頃の子はいないのだが、書店で見つけ、気になることがあって買った。
この号の付録は「ぎゅうどんづくりゲーム」。吉野家とのコラボ企画で、主に紙でできたキットを牛丼や鍋、お玉などに組み立てるものだった。身近な、だけれども遠い「大人の世界」に触れられる感じで、子どもたちは楽しいだろう。親子で一緒に取り組まないと完成できないよう工夫されているのも好評だ。
聞けば、『幼稚園』は、一昨年から企業とのコラボによる付録を登場させてはヒットさせてきた。「やきにくリバーシ(オセロ)」(牛角)、「セブン銀行ATM」…。江崎グリコと組み、「セブンティーンアイス自販機」を付けた昨年7月号は、1931年の創刊以来、初めての重版を記録している。
知らなかった。それで牛丼キットの付録の何が気になったかと言うと、コラボなら当然ではあるものの、実在の企業ブランドが前面に打ち出されている点である。幼児相手にまで広告か、ということもだが、私が違和感を禁じ得ないのは、企業の価値観を刷り込まれ、それを内面化させていく幼児たちのイメージだ。
十数年前に取材した、「スチューデントシティ・ファイナンスパーク学習」を思い出す。廃校の校舎などにしつらえた企業のブースに小中学生を集め、模擬ビジネスをやらせて、「社会の仕組みや経済の働きを学ばせる」という。京都市などがいち早く取り入れ、今では全国的に広がっているのだが、プログラム作成者の中には、米国の多国籍企業を中心に結成されている国際経済教育団体があった…。
せめて幼稚園児たちぐらいには、普遍的な価値観を学んでもらいたいと願う。だが同時に、バカめ、今や巨大資本の価値観こそが普遍的なのだとあざ笑われているようにも思えてしまい、悲しい。人は何のために生きているのか。