斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」
命を見殺しにして五輪強行か
この国の狂いっぷりは常軌を逸している。橋本聖子五輪担当相は1月26日の衆院予算委員会で、7月の東京五輪・パラリンピック開催には医師や看護師ら延べ1万人程度の医療従事者を動員する考えを明らかにした。1人当たり5日間の勤務を依頼することになるという。
調べてみると、東京都医師会が都の要請で、延べ5000人規模の救護所運営を計画していた。ただでさえ新型コロナウイルスの第3波で医療体制が崩壊し、症状が出ても入院どころか治療も受けられず、検査さえしてもらえないまま見殺しにされた人々が続出しているというのに、政府はこの上さらに、1万人もの医師や看護師らを奪っていく腹だとは。
本稿執筆時点で、政府は何が何でも五輪を強行する構えを崩していない。菅義偉首相は同じ国会で、「コロナ対策、まさに万全な安全安心の態勢を組む中で、五輪は準備していきたい」と述べたそうだが、この連中はいったい何だ。
利権と国威発揚だけでは飽き足らず、ついでにコロナを利用して、高齢者や基礎疾患のある者を一掃する目的でもあるのか。東京五輪を中止すべき理由は山ほどあるけれど、この問題だけをもっても、絶対に開催されてはならない十分すぎる根拠になってしまうではないか。
五輪開催の「中止」か「再延期」を求めている人が全体の8割を占めたとする世論調査の結果が公表されたのが1月中旬。それで野党各党がようやく政府の姿勢を追及し始めたのは、いかにも遅かった。せめて早めに挽回し、世論に沿った政治を実現させよ。
今やコロナ禍における最大の不安要因は東京五輪である。いやあ人手がなくってスイマセン、お国のためだもんで、などと言われて私は死にたくない。誰だってそうだろう。この期に及んで中止を求める大合唱が湧き起こらない社会なんて、存在する価値があるのだろうか。