松久 染緒 「随感録」
脱炭素化は地球生き残りに不可欠
世界各地で豪雨による洪水、熱波による山火事など自然災害が激増しています。日本でも最近、台風の発生や上陸が増え、毎年のように被害が発生しています。それらの原因としてあげられているのが「地球温暖化」です。日本は2030 年度までに「温室効果ガス」の年間排出量を13年度実績よりも46%減らすことを国際公約し、2050 年までには排出量を実質ゼロにする目標も定め、その実現を目指しています。
本当に温室効果ガスによって災害が増えているのか。そのガスとは何で、それをいったいどのくらい出しているのか。見えないガスをどうやってはかるのか。本当に減らすことができるのか。素人の私たちが感じているこれらの基礎的な疑問について考えてみたい。
1. 地球は本当に暖かくなっているのか
世界気象機関によると、世界の平均気温は上昇し続けており、2020年の世界の平均気温は、1850年~1900年の平均よりも1.2度高くなっています。その原因は、大気中に増えている温室効果ガスです。温室効果の強さはガスの種類によって異なり、メタンガスは二酸化炭素の25倍、一酸化二窒素は298倍、エアコンの冷媒に使われる代替フロンは一万倍となっています。
2.温室効果ガスとは何か
温室効果ガスの代表は、二酸化炭素(CO₂)で、石炭、石油などの化石燃料、木材、ごみなどを燃やすとできるガスです。そのほか牛のゲップ、下水処理で発生するメタンガス(CH₄)、窒素肥料による一酸化二窒素(N₂O)などがあります。
地球は太陽に温められると地面から赤外線を出します。温室効果ガスはこの赤外線を吸収して再放出し、地表付近の空気を温める役割を果たします。このガスがもしなかったら、地球の表面温度は氷点下19度くらいになるといわれていますから必要なものですが、問題はそれが増えすぎていることです。
3.見えないガスの排出量はどうやってはかるのか
温室効果ガスは、発電所、自動車、家庭のガスコンロなど地球上のあらゆる場所から発生していますから、いちいちはかることはできません。計算方法は国際的ガイドラインが決まっており、燃料消費量などの「活動量」、「排出係数」、CO₂基準の温室効果の強さを示す「地球温暖化係数」の三つの数値を掛け算して求めます。
火力発電所の場合では、排出係数は石炭1トン当たりCO₂が2.33トン、CO₂の温暖化係数は1なので、例えば石炭を1,000トン燃やして発電すれば、1000×2.33×1=2,330トンのCO₂を排出した計算になります。すべてのガスをCO₂量に換算します。
4.排出量を減らすにはどうすれば
日本の2019年度のCO₂排出量は12億1,200万トンで、うち化石燃料を燃やしたエネルギー使用によるCO₂が85%を占めます。発電時にCO₂を出さない太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入・拡大が急がれるわけです。家庭や工場で省エネ性能の高い機器の導入などでエネルギー消費を減らすことも欠かせません。
5.本当にゼロにできるの
実質ゼロということは、まったくCO₂を輩出しないわけではありません。植物は光合成でCO₂を吸収するので、実質ゼロとは、排出量を極力減らせるとともに森林などの吸収力を考慮に入れて差し引きゼロを目指すことです。2019年度の日本のCO₂吸収量は4,590トン、総排出量の3.8%で、今後森林を増やせる余地もほとんどありません。このため産業界ではCO₂に値段をつけて排出した分の費用負担を求めたり(カーボンプライシング)、ガソリンエンジンの自動車を電気との併用型(ハイブリッド)にしたり、さらに100 %電気自動車化などを進めています。政府からは省エネ家電切替等の補助金など、地球規模でのありとあらゆる脱炭素化の行動計画とその実現が求められています。地球温暖化の現状を見れば、脱炭素化に向けた目標の実現がなければ人類存続の危機にもつながるといえる重大な課題なのです。