「働く」はみんなのもの

 

   ウーバーイーツな世界(4)

     労災保険ができる?

 

 

    ジャーナリスト 竹信 三恵子


 労災保険は、保険料を雇用主が負担し、社員が業務によるけがや病気で働けなくなった時、保険金で生活を守り療養費を保障する制度だ。としたら、働く上で事故がつきもののウーバーイーツ配達員にとって、労災保険は必須のはずだ。

 ウーバーイーツユニオンは、この労災保険の整備を強く求めてきた。こうした声の高まりに、厚生労働省の労働条件分科会労災保険部会でもウーバー配達員などの労災保険をめぐる審議が進んでいる。

 と聞くと「お、いいことじゃないか」と、だれもが思うだろう。だが問題はそれが「特別加入」という方式であることだ。

 「特別加入」とは、個人事業主扱いの働き手などに「業務依頼」して働かせる企業が「特別加入団体」となり、働く人々が自前で保険料を負担する方式だ。具体的には、ウーバー社などが設立した「フードデリバリーサービス協会」を「特別加入団体」とし、配達員が保険料を払う。

 労災保険の原点は、「雇用主が労働者の労働で利益を上げている以上、その指揮命令によって生まれる危険についても企業が責任を持つ」という考え方だ。とすれば、会社の強い指揮命令に事実上縛られているウーバー配達員が、不安定な仕事で得た低い収入から高い保険料を払って自己防衛させられるというのは、どこかおかしくないか。

 2020年8月、同ユニオンは(1)企業の拠出による通常の労災保険を適用する(2)そのための労働者災害補償保険法を改正し、対象を「労働者」からフリーランスも含む「労務を提供し、その対価を得ている者」に広げる――などを要求している。

 「契約形態」ではなく働き手の「実態」に即したものでなければ、安全のための網は機能しない。