地震保険販売でAmazonとの提携に込めた東京海上の思惑
手始めに地震保険、傷害保険にも広げる
「東京海上、Amazonで保険販売 デジタル販路で若者開拓」 先月12日の日経電子版に「東京海上日動火災(以下東京海上)が8月22日からアマゾンジャパンのネット通販サイトで保険を販売する。地震保険から始め、傷害保険などに広げる」という記事が掲載された。
記事は「Amazonのアカウントで保険に加入し、保険料の支払いから保険金の受け取りまで一括で提供する国内初の保険」と説明している。加入手続きは「Amazonのサイトにある東京海上の保険加入用の専用サイトにアクセスし、Amazonのアカウントの認証に同意したうえで補償内容など必要な情報を入力し、保険料をAmazonPayで払う」非対面募集をとっている。
損害がなくても保険金を支払うインデックス保険
この保険の商品名は「地震に備えるEQuickAmazonギフト券対応版」(以下「EQuickAmazon版地震保険」)。東京海上が昨年3月に発売したインターネット専用商品であるインデックス版地震保険の「地震に備えるEQuick保険」をAmazonのサイトで販売するものだ。
インデックス保険とは、損害の有無にかかわらず、あらかじめ決めておいた条件(例えば契約者の居住地で震度6弱以上の地震が発生した場合)に該当すれば、保険会社は損害調査を行わず迅速に保険金を支払うというものだ。
インデックス保険は海外でも、例えばSOMPOジャパンがタイの稲作農家の干ばつ被害について、タイ気象庁が発表する累積降水量が一定値を下回った場合に一定の保険金を支払う「天候インデックス保険」を販売している。
「EQuickAmazon版地震保険」の補償内容は下表(東京海上発行資料より)のとおりだが、契約者は地震発生後最短3日で、保険金をAmazonギフト券でも受け取れる仕組みとなっている。ただし、受け取れる保険金はスタンダードプランに加入して、震度7に遭遇しても25万円に過ぎない。火災保険の地震火災費用特約を独立させ、お見舞金のような役割を持たせた保険である。保険料も年間4800円と高めに設定されている。
デジタルでの販路を拡げて事業費を圧縮
東京海上、Amazon両社は、この保険によって「巨大なアマゾンのデジタル販路を生かし若年層を取り込む」と言う。しかし若者に限らず、最大25万円しか補償されない地震保険に、いくらはやく保険金を受け取れるといっても、多くの人が加入するとは思えない。では、何のため、この保険を販売するのか? 両社は「EQuickAmazonギフト券対応版」の保険を傷害保険にまで広げると言っている。
「保険販売はこれまで対面営業や自社のネットが主流だった。しかし、業界全体で自動車保険はネット経由の販売シェアが1割程度(正味収入保険料ベース)にとどまるなど、デジタルの販路を活用しきれていない。利用者が多いアマゾンのサイト経由で販売すれば、保険になじみの薄い若年層の取り込みにもつながる」 日経の記事はこう付け加える。
確かに日本では自動車保険の正味収入保険料は約4兆1600万円のうち、ネット販売6社の正味収保は約3300万円強と、シェアは7.9%に過ぎない。この先自動車産業を席巻するCASE革命による自動車保険料の落ち込みも予想されるなか、損保各社はデジタル販路の拡大でそれを食い止めると考えているであろうし、何よりそれは代理店手数料など事業費の一層の削減、イコール代理店のさらなる廃止につながる道である。日本のトップ損保東京海上とアメリカの巨大インターネット企業Amazonとの提携商品である「EQuickAmazon版地震保険」の発売は、そのトリガー(引きガネ)である。