雨宮処凛の「世直し随想」
異常事態のなかで
なんだか悪夢を見ているようだ。
海の向こうでは戦争をやっていて、感染症の流行は2年以上経っても収まらずに第7波がやってきて、そして安倍元首相が統一教会を恨む男に自作の銃で撃たれて命を奪われた。
そうしてこの原稿を書いている今、自民党をはじめとする多くの国会議員と統一教会との関係が次々と暴露されている。カルトと言われる宗教は、一体どこまで政権に深く食い込んでいたのだろう。
いろんなことが続き、どれもこれもがまるで映画のようで、脳のキャパを超えている。
コロナ禍が始まった頃もそうだった。一時期は、政府のコロナ対応があまりにひどくてニュースを見るのも苦痛になった。繰り返される医療崩壊、増え続ける自宅での死者。それなのに開催されるオリンピック。そんな現実を直視したくなかった。
そうした状況に戦争と元首相が撃たれ殺されるという大事件が重なったのだ。そしてすぐに出てきた「国葬」という話。またしても二分される世論。
なんだかいろんなことの情報量が多すぎて、ついていけない。いろんなゴタゴタから、距離をとりたい。SNSもコロナ禍以降、攻撃性が増してほとほと疲れてしまう。そんなふうに思っている人も多いのではないだろうか。
そんな時は、無心になれることに没頭することにしている。猫をめでる、好きな音楽の世界に浸るなど。
この2年以上、私たちは異常事態を生きている。常にそう言い聞かせて、心を守るようにしている。