「働く」はみんなのもの
ジャーナリスト 竹信 三恵子
「会計年度職員」の不思議(5)マタハラの制度化
「会計年度任用職員(会計年度職員)」の8割近くが女性だ。なのに、この制度は、産休・育休がきわめて取りにくい。
2021年3月、労働NPOの労働相談に雇い止めの相談があった。東海地方の公立学校で働く会計年度職員の女性からだった。
学校側に、4月の出産予定を伝えると、来年度の再任用はないと伝えられた。3月末までに雇い止めを撤回させないと仕事を失ってしまう。まずは取材を入れた。「女性活躍という観点から記事にしたい」と言うと、応対した教員はあわてた様子で、教頭が多忙で電話に出られないと言った。
翌日さらに電話し、「期限までに回答がなかったので職員からの情報だけで書く」と一押しすると、すぐ「教育委員会と相談の上、雇い止めは撤回」との返事が来た。あっけなかった。
女性には「定員が1人増えた」と言っただけで、謝罪もなかったという。「1年有期」の明文化で契約打ち切りの心理的ハードルが下がっていると痛感した。
同じ年度末、神奈川県で福祉関係の相談業務などを10年以上担当してきた会計年度職員の女性が、5月の出産を前に雇い止めを通告されたと報じられた。「コロナ禍による業務削減」が理由だった。
男女雇用機会均等法9条では、妊娠中の女性労働者に対する解雇は無効。マタニティーハラスメント(マタハラ)の禁止である。ところが、有期労働者は「解雇」ではなく契約切れなので、これが適用されない。
総務省のマニュアルには育休が理由の再任用拒否なら地方公務員育児休業法第9条違反とある。だが育休が理由であることの証明は、相当難しい。
1年有期を合法化した会計年度職員制度は、効率的な「マタハラの制度化」として機能している。