雨宮処凛の「世直し随想」


 インボイスという仕打ち

 

 最近、「インボイス」という言葉をよく耳にする。

 フリーランスにトドメの一撃となるような制度らしいということ、来年10月に始まるらしいということはわかっているものの、それに対してフリーの自分がどうすればいいのか、わからない。

 周りのフリーランスに聞いても、インボイスをまったく知らない人、不安だけどどうしていいかわからない人、「まぁ、なんとかなるっしょ?」と異様に楽観的な人、「インボイス、絶対つぶす!」と鼻息荒い人などいろいろだが、みんなよくわかっていないという点では共通している。

 私の父は税理士で、以前からその話は聞いていたものの、話は複雑で説明を聞いているうちに興味を失ってしまう。

 よくわからないながらも細々と仕事をしているフリーランスをつぶすような制度であるということは理解できてきた。25歳で物書きデビューして22年。なんとか書くこと一本で食べてきた。その間、いろいろなことがあり、収入の増減も激しかったけれど、毎年確定申告をし、せっせと税金を払い続けてきた。

 この2年半はそんな中でももっとも厳しい状況だった。コロナ禍で講演やイベントの仕事が激減したからだ。収入は大幅に減ったけれど、持続化給付金などの対象にはギリギリならず、自力でなんとかやってきた。そんなフリーランスにこのタイミングで「インボイス」という仕打ちである。

 「このまま黙っていられない」。そんな人たちと近々イベントをするつもりだ。フリーランスの連帯が始まりそうな予感である。