斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」


 

 

         戦争と大増税の予感

 

 

 

 イヤな予感がする。

 一つは戦争、もう一つは消費税大増税に対して、だ。

 5月23日の日米首脳会談で、台湾有事の際に米国は軍事介入するとバイデン大統領が明言。岸田文雄首相は防衛費の「相当な増額」を確保すると伝えた。背景にあるのは中国脅威論。米国の覇権を維持するために中国を包囲する目的と表現したほうが正確か。

 バイデン発言が実行されると、戦闘に赴くのは在日米軍だ。とすれば沖縄をはじめとする日本列島が戦場になる。「防衛費の増額」云々は、岸田氏が前月末に自民党から受け取った安全保障問題に関する提言を受けたもの。かねてGDPの1%以内とされてきた防衛費の目安を、2%に引き上げるべきとの主張だった。

 実現すれば、現在5兆円弱で世界第9位とされる日本の軍事支出が11兆円規模に膨らみ、米中に次ぐ第3の軍事大国になる。首脳会談前には「経済安保推進法」が可決・成立してもいて、このままでは社会構造の全体が米国同様の常時戦時体制に移行させられかねない情勢なのである。

 戦争そのものは中国の出方次第でもある。そうならない、させないための外交努力が最も重要なことは当然だ。

 ただ、いずれにしても米国は日本を対中包囲網の最前線に位置づけ、岸田政権はそれに応える構えだ。防衛費のかつてない増大が財源論を伴うのは必定である。

 安倍晋三元首相による、「日銀は政府の子会社」という発言は示唆的だった。その少し前に日銀は、新たな金融緩和策だとして、国債の市場からの買い入れ枠を無制限に拡大する方針を決めている。政府が中央銀行による引き受けを前提に、軍事支出拡大のための国債を乱発することが可能な構図が創られた。

 そして、そうなればなったで、今度はマスコミが財政危機だと騒ぎだす。ならば消費税増税だというシナリオに、私たちは幾度となく煮え湯を飲まされてきたではないか。