あいおい損保元会長・福田耕治さんら
「戦争について考える」を出版
(写真は福田耕治さん)
一般社団法人ディレクトフォース(DF)は、企業・団体等の幹部経験者がその知見、人脈を活かして社会貢献、自己研鑽を積む目的で2002年に設立された。現在600人の会員を擁し、多彩な活動をくりひろげている。あいおい損保元会長の福田耕治さんもメンバーである。その福田さんをはじめ、会員のなかには、小学校の低学年のころ太平洋戦争を体験した人々も少なくない。その有志たちが「一般社団法人ディレクトフォース・戦争体験を語る会」として、8月15日を期して「戦争を考える」という小冊子を出版した。
冊子は10人の筆者がそれぞれの戦争体験を語るところから始まる。そして、冊子の編集長である横井時久さんが「戦争の歴史」を、国別犠牲者数などの数値も示しつつ概観する。寺田弘さんは「日本帝国主義の運命を決めた統帥権問題」についての論考を提示し、国民の声と平和主義が抹殺されていくメカニズムの解明を試みる。そして戦後、戦争放棄の憲法はアメリカに押し付けられたものではなく、マッカーサー回顧録などから、日本側の提案であったことなどを示し、憲法9条を守り活かすことは世界史的な日本人の任務ではないかと締めくくる。それを受けて、横井時久さんが「人はなぜ戦争をするのか」と根源的な問いかけを行い、水野勝さんは「ウクライナ戦争についての雑感」と題して、ウクライナやロシアに落ちたとされる隕石の正体について、背筋も凍る仮説を紹介する。最後にふたたび横井時久さんが「戦争についてのトピック」のなかで、憲法9条の意味を改めて考察する。
冊子は単なる体験談ではなく、戦争を哲学的、社会的、歴史的に読み解こうとする意欲的な書物だが、生身の人間による反戦・平和への渾身の思いに溢れた情熱の書であり、この時代を生きる人々への提言でもある。
福田さんは中国で育ち、敗戦後九州に引き揚げた体験談を語っている。中国におけるアメリカ空軍爆撃下の恐怖の逃避行、引き揚げの混乱と苦労などが記述されるが、決してそれだけに終わらない。福田さんは最後にこういう。
「いま、国の内外を問わず大戦の直後に誓い合った平和主義の流れに反して時代を逆流させようとする動きが強まっている。遅ればせながらではあっても、今こそ過去の貴重な体験に学び、世界中が挙って本当の知恵を出し合う時にあるのだと思う」(文・伴 啓吾)
冊子のお問い合わせは福田耕治さん(koji0624-gionnosu@arrow.ocn.ne.jp)へ