雨宮処凛の「世直し随想」
ロスジェネを語る
あまみや かりん 作家・活動家。フリーターなどを経て2000年,自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。『生きさせろ! 難民化する若者たち』(07年,太田出版/ちくま文庫)で日本ジャーナリスト会議賞受賞。
2007年、就職氷河期を過ごした私たちの世代には「ロストジェネレーション」=「失われた世代」というあまりうれしくない名前がつけられた。それから16年。当時32歳だった私は48歳となった。ということは、ロスジェネがそろそろ50代に突入するということである。
振り返ると、自分たちは実験台にされたような世代だなぁ、と遠い目になる。「失われた30年」と、20歳から50歳まで丸かぶりするとどうなるかという、壮大な社会実験だ。周りを見渡せば、20代からずっと非正規で働き、年収が200万円に届いた経験がほとんどないという人や、「結婚や子育てなど考える余裕もなかった」という単身者、またそんな生活の中でウツになった人もいれば、自ら命を絶った人もいる。
そんなロスジェネが、19年には「人生再設計第一世代」と名前をつけられ、政府は33年間で30万人を正社員化する目標をぶち上げたものの、3万人しか達成されていない。同じ19年には宝塚市が正職員としてロスジェネを募集し、わずか3人の枠に全国から1800人以上の応募が殺到するということもあった。
そんなロスジェネ問題を語り合った対談本を、出版した。対談相手は77年生まれでロスジェネの白井聡さん。『失われた30年を取り戻す 救国のニッポン改造計画』(ビジネス社)というタイトルだ。ロスジェネだけでなく、防衛費の増大やロシアによるウクライナ侵攻、日本の原発回帰、統一教会と自民党の関係などを、縦横無尽に語り合った一冊となった。ぜひ、手にとってみてほしい。