高校野球「7回制」や「猛暑対策」も、当事者(高校生)に賛否を聞くべきでは?


           玉木 正之        


 たまき・まさゆき スポーツ文化評論家,日本福祉大学客員教授。著書に『スポーツとは何か』(講談社現代新書)など多数。近刊は「真夏の甲子園はいらない 問題だらけの高校野球」(編・著、岩波ブックレット、2023年)


 

 

 

 日本高等学校野球連盟(高野連)が、夏の甲子園大会や、地方大会で、試合を9回から7回にする案を検討し始めたという。猛暑対策として試合時間の短縮が狙いだ。

 この意見に、私は半分賛成、半分反対としか言えない。

 そもそも野球は1845年に21点先取したチームが勝つルールで始まった。が、それでは初回で勝負が付いたり、50回以上も2日間に渡って続いたりと、試合時間が定まらず、間もなく12回で終了となったが、それでも長いので1857年に9回制となり、今日まで続いている。

 が、それでも試合が長いとの声も多く、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)主催のU18(18歳以下)W杯やアメリカの高校生以下の野球では7回制が採用され始めた。

 そもそもスポーツのルールは、やっている人たちがやりやすい(面白い)ように変えていくものだから、高校野球もスピードアップして7回制にすることには、私も賛成だ。

 しかし、それがはたして「猛暑対策」になるかどうかは甚だ疑問。もしも本気で高校生の健康を考えるなら、場所を甲子園のある関西地方からもっと寒冷地に移すか、開催時期を春の予選と秋の全国大会のように、涼しい時期に変更するか、あるいは北海道の稚内あたりに甲子園球場そっくりの新球場を建設し、地方の活性化にも貢献する斬新な方法を考えるべきだろう(高校野球の人気を考えれば、NHKから放送権料を取り、スポンサーを集めれば可能な計画は数多く考えられるはずだ)。

 猛暑対策も7回制も、多くの人々が議論して考えれば良いが、新聞やネットに出たのは高校野球の監督の賛否の意見ばかり。なぜか当事者(高校生)の意見がまったく出てこない。このあたりが現在の高校野球最大の問題点では?