雨宮処凛の「世直し随想」
「外国人と共生」超入門書
あまみや かりん 作家・活動家。フリーターなどを経て2000年,自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。『生きさせろ! 難民化する若者たち』(07年,太田出版/ちくま文庫)で日本ジャーナリスト会議賞受賞。
8月末、「難民・移民のわたしたち これからの『共生』ガイド」を出版した。
この国で暮らす多くの「難民・移民」に話を聞いた。ミャンマーで民主化活動をしていた少数民族ロヒンギャの男性。部族の長である父親から「赤ん坊を殺す儀式」を命じられ、アフリカの某国から逃れてきた女性。また、父親が独裁政権に近い仕事をしていたことから命を狙われるようになったチリ人シェフなどに取材した。
取材をしている最中、クルド人へのヘイトが激しくなり、春には埼玉県川口市や蕨市でヘイトデモが行われた。渦中にあるクルド人やその子どもたちにも取材した。多くの人が知る通り、日本の難民認定率は極端に低く、1~2%。その一方で人手不足が叫ばれ、この国では200万人の外国人が働いている。日本で働く人の3%だ。今やコンビニや飲食店で「働く外国人」を目にしない日はない。
これだけお世話になっているのに、この国の政策の多くは外国人に非常に冷たい。特にコロナ禍、困窮者支援団体には外国人からのSOSが殺到。多くが働くことを禁じられている上、福祉の対象にもならない「仮放免」の人たちで、支援団体は2年半でのべ1万人の外国人に2億円近くを給付した。民間の団体がそれほどの額を出さなくてはいけないほどに、外国人への公的支援が乏しいのだ。
今や世界の80人に一人が難民。そしてこの国は50年後、10人に1人が外国人になるそうだ。これまでよりずっと多くの外国人と生きていく未来の自分たちのために書いた超入門書、ぜひ手にとってほしい。