雨宮処凛の「世直し随想」
新宿で三千人が「虐殺やめろ」
あまみや かりん 作家・活動家。フリーターなどを経て2000年,自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。『生きさせろ! 難民化する若者たち』(07年,太田出版/ちくま文庫)で日本ジャーナリスト会議賞受賞。
「ご飯なんてありません。飲み物もありません。あるのは死体と死臭です」
3月30日、東京・新宿駅南口で、ガザ出身の女性はマイクを握り、言った。「破壊されてるのはあなたの生活じゃないから、壊されているのはあなたの家じゃないから、あなたの家族が殺されているのではないから、あなたがガン患者じゃないから、だからなんの変化もなく日常を過ごせているんでしょうか?」
彼女は新宿を行き交う人々に語りかける。辺りにたなびくのは、赤、緑、黒、白からなるパレスチナの旗、旗、旗。パレスチナの「土地の日」であるこの日、全国で、イスラエルによる侵攻や虐殺の中止を求めるアクションが開催されたのだ。新宿を取り囲むスタンディングには、約3千人が集まった。
みんなが掲げるプラカードには、「子どもを殺さないで」「今すぐ停戦」「黙殺しないで」「防衛省はイスラエルの殺人ドローン買うな!」などなどの言葉。冒頭の女性の前にマイクを握った、やはりガザ出身という女性は、2日前、ガザの病院がイスラエル軍によって破壊されて民間人170人が犠牲になったことを話した。彼女の父親はその病院の外科部長。父親が建てた家もすでに破壊されているという。
イスラエルによる虐殺が始まって、もう半年近く。ガザ地区の保健当局によると、これまでの死者は3万2070人になるという(3月22日)。そのうちの多くが子どもだ。
この日、世界中で「虐殺やめろ」の声が上がった。一刻も早く、悲劇が終わることを祈っている。