雨宮処凛の「世直し随想」

 

 

     生活保護を先進国水準へ


 あまみや かりん 作家・活動家。フリーターなどを経て2000年,自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。『生きさせろ! 難民化する若者たち』(07年,太田出版/ちくま文庫)で日本ジャーナリスト会議賞受賞。


  うらやましくて、悔しくて、涙が出そうになった。

 それは10月3日に登壇した日弁連・人権擁護大会の「今すぐ生活保障法の制定を!」と題されたシンポジウムでのこと。

 最後のセーフティーネットを「生活保障法」として権利性をより明らかにしたものに、という内容だったのだが、そこで諸外国の生活保護に該当する制度が紹介されたのだ。それを知って、身悶えしそうになった。

 まず、この国で生活保護を利用するには、あらゆるものを手放さなければならない。その最も象徴的なものが貯金で、日本では、貯金額が国が定める最低生活費の半月分以下でないと生活保護の対象にならない。よく一人暮らしの人は残金6万円くらいになったら窓口に行くといいというのは、これが根拠である。

 しかし、ドイツでは1年の猶予期間中、4万ユーロ(643万円)、イギリスでは1万6000ポンド(304万円)、韓国では最大7740万~1億1340万ウォン(851~1247万円)の貯金を持つことが許されているという。

 日本でも貯金の所持が認められれば、どれほど入りやすく、出やすい制度になることか。

 それだけではない。日本では13年から生活保護費が引き下げられ、この物価高騰でみんな大変な思いをしているが、スウェーデンでは物価高もあり、直近2年連続で前年比9%弱の大幅引き上げ。またドイツでも2年連続で前年比12%の引き上げが行われたという。

 あまりの違いに頭を抱えつつ、制度の拡充の必要性を思い知らされた。