雨宮処凛の「世直し随想」
貧困問題と闇バイト
あまみや かりん 作家・活動家。フリーターなどを経て2000年,自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。『生きさせろ! 難民化する若者たち』(07年,太田出版/ちくま文庫)で日本ジャーナリスト会議賞受賞。
「全財産を使いきって5日間何も食べていなかった」。この言葉は衆院選中、福岡県久留米市内のコンビニでおにぎりなどを盗み、逮捕された47歳の男が口にしたものだ。 「2~3日食事がとれておらず、金を手に入れて食事がしたかった」。こちらは今年2
月、東京・高円寺のコンビニで店員を脅して逮捕された男が口にしたもの。男はコンビニで、「もう限界なんです。お金を出してください」と包丁で店員を脅して逮捕。46歳。2人とも、私と同世代のロスジェネだ。 そしてつい最近、「畑から野菜を盗んだ」ことで拘留された男性を支援した「反貧困ネットワーク」の瀬戸大作さんから話を聞いた。男性は、失業して1年前から飼い犬とともに車上生活だったという。そんな中、ナスとピーマンを数個盗んで拘留されたらしい。 昨今、「闇バイト強盗」が全国各地で多発しているが、その背景にあるひとつは間違いなく貧困だろう。どんなに怪しいと思っても「即日」「高収入」に引かれて応募するのは、それほどに生活が逼迫(ひっぱく)しているからだ。もちろん、どれほど困窮したとしても犯罪は決して正当化できない。そして犯罪に走るのは、ごくごく一部の者だけだということは強調しておきたい。 貧困問題に関わり始めてから、私はずっと「これを放置するとゆくゆくは治安の問題として社会が多大なツケを払わなければならなくなる」と警鐘を鳴らしてきた。 今、それが現実になりつつあるのをひしひしと感じている。