雨宮処凛の「世直し随想」

 

 

     司法は生きていた


 あまみや かりん 作家・活動家。フリーターなどを経て2000年,自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。『生きさせろ! 難民化する若者たち』(07年,太田出版/ちくま文庫)で日本ジャーナリスト会議賞受賞。


 11月30日、歴史的な判決が出た。

 それは名古屋高裁で出た、生活保護引き下げを巡る訴訟。第二次安倍政権の13年から生活保護基準が引き下げられ、それに異を唱えて全国29都道府県で千人を超える生活保護利用者が原告となり、国を訴えている裁判の判決だ。

 一審判決は原告の請求棄却というものだったのだが、今回の判決では引き下げを「不適切」と認めて保護費減額の決定を取り消すだけでなく、全国で初めて国へ賠償を命じるものとなったのだ。

 「完全勝訴」

 「司法は生きていた」

 裁判所の前で弁護団が掲げた紙に躍る言葉を見て、胸が熱くなった。なぜなら、私はこの裁判を応援しまくってきたからだ。

 前半は原告敗訴が続いた裁判だが、途中から盛り返し、今や全国各地で怒涛(どとう)の快進撃となっている。

 現時点で、地裁レベルでは12勝10敗と勝ち越し。2022年5月の熊本地裁判決以降は13勝2敗と原告側が圧勝状態だ。

 しかし、喜んでばかりもいられない。

 裁判が始まった9年ほど前、千人を超えた原告からは多くの死者が出ている。なぜなら、生活保護を利用する人の55・6%が65歳以上の「高齢者世帯」。ついで多いのは「障害者・傷病者世帯」で24・8%(21年度)。原告の中にも高齢だったり病気を抱える人は少なくない。

 よって、弁護団・原告団は早期解決を求めている。どうか国は上告せず、判決を確定させてほしい。(12月5日記)