盛岡だより」(2024.4 

 

       野中 康行 

  (日本エッセイスト・クラブ会員・日産火災出身)


                                 

                                       1年生にエール


 

 今月から、国の「会計年度」、会社の「事業年度」が始まった。

 新小学生、制服が真新しい新高校生、まだスーツを着こなせない新社会人が目につくシーズンである。幼児から児童へ、生徒から学生へ、そして社会人へ、人事異動で役職に就き新赴任地へと。人生のステップアップの時期でもある。

 小さな体に大きめのランドセルを背負った新小学1年生の登校姿を見ると、可愛らしくてほほえましい。制服姿の女子高生はキリリとして大人びて見え、まだ童顔の新入社員は初々しい。そんな姿を見ると応援したくなる。

 

 日本では、毎年見られる光景だが、これは日本特有のものである。なぜなら、国によって会計年度が異なり、さらに、それと新学期の始まりが同じとは限らないからだ。

 国の会計年度が4月からという国は、イギリス・カナダ・インドなどと少なく、多くは1月~12月である。新学期の始まりは9月という国が多い。アメリカは会計年度と新学期は同じ9月だが、オーストラリアのように会計年度が7月からで、新学期は1月からという国もある。各国バラバラで、国の会計年度と新学期が同じで4月なのは、日本とパナマぐらいでごく少数なのだ。

 

 新学期が異なると、外国から留学生を受け入れるときと、日本人が外国に留学生するときに不便である。多くの国に合わせて、日本も学期を9月からにすることが検討されたが、立ち消えになった。コロナ禍の最中に再燃したが論議は進まなかった。

 その当初でだいぶ前になるが、論議の中で出た意見を新聞で読んで、おもしろい意見だと今でも覚えている。

 高校球児が、夏の甲子園を目指しているときに、大学受験ではかわいそうだ。定年退職日を3月に定めている企業が多く、すぐに補充ができなくなる。卒業・入学・入社式などが「春の季語」になっていて、それがなくなると俳句が詠めない。入学試験の合・不合格の電報文、「サクラサク(桜咲く)」「サクラチル(桜散る)」は日本の文化になっている。などだった。

 見送りになったのはこれらのためではないだろうが、なるほど、そんなところにも影響が出るのかと妙に納得したものである。

 

 「ピッカピカの1年生♪」

 中高年の方なら覚えているだろう。1978(昭和53)年から10数年続いた、小学館の学習雑誌『小学1年生』のコマーシャルソングである。日本中の小学生が、カメラの前で話す自然なしぐさがかわいらしくて、視聴者に受けた。それが、小学1年生に限らず、新幼稚園児から新社会人までも形容することばになった。

 一斉にステップアップする4月は、制度や慣習の時期が一致している日本特有のシーズンである。新児童・高校生たち、そして新社会人。家族から祝福され励まされているだろうが、私からもエールを贈る。

 

 頑張れ! ピッカピカの1年生。