斎藤貴男「レジスタンスのすすめ」


 

 

   オータニ礼賛報道の裏で進む日米一体化


 さいとう・たかお 新聞・雑誌記者を経てフリージャーナリスト。近刊「『マスゴミ』って言うな!」(新日本出版、2023年)、「増補 空疎な小皇帝 『石原慎太郎』という問題」(岩波現代文庫、2023年)。「マスコミ9条の会」呼びかけ人。


 今日もテレビはドジャースの大谷翔平であふれている。今年は右ヒジ手術の影響で二刀流はかなわないが、その分よく打って、5月の連休明け時点ではホームラン、打率など打撃の殆どの部門でトップを走っている。なるほど大した活躍ぶりだ。

 とはいえ、こう連日連夜のオータニ礼賛には、さすがに閉口する。と同時に、どこか政治的な意味合いを帯びているようにも感じてしまう。

 自民党の裏金問題隠し? マイナンバー保険証? 国民年金保険料の納付期間延長問題? いやいや、権力の横暴から国民の目を逸らすとか、そういう話ではなくて。

 理想的な日本人モデルとしての大谷選手、というイメージか。どんな分野でも、優れた才能はアメリカで、グローバルビジネスの総本山でこそ発揮されるべきであり、彼(か)の国に貢献することが重要なのであって、そうならなければ意味がない――と、私たちは日々、刷り込まれているような気がしてならない。日本は人材の孵卵器(インキュベーター)、プロ野球もメジャーリーグのファーム(養成所)に過ぎないのだ、と。

 日本は今、軍事面でも経済面でもアメリカとの一体化を、否、アメリカの一部に組み込まれていく道を、しかも自ら積極的に歩んでいこうとしている。そんな状況でも単なる使用人には甘んじない生き方のシンボルが必要だという発想が、たとえばNHKや、その上にいる政府・自民党には浸透しているのではないのか。

 水原一平元通訳の違法賭博事件で、大谷選手は一方的な被害者だと、FBI(米連邦捜査局)は結論づけた。だとしても、アメリカのカネまみれ社会には何が潜んでいるかわからない。底知れぬ闇が広がっている現実が忘れられてはならないと思う。

 それもこれもひっくるめての日米〃一体化〃だと開き直られたら、それまでだが。