前田 功          [昭和サラリーマンの追憶]

              

      

      損保ジャパン「外部調査委員会」の闇 

             


 まえだ いさお 元損保社員 娘のいじめ自殺解明の過程で学校・行政の隠蔽体質を告発・提訴 著書に「学校の壁」 元市民オンブズ町田・代表


  2024年6月、損保ジャパン(以下SJと略す)は保険料談合についての外部弁護士による調査報告書を公表した。数日後、知人がここに載ってるよとURLを教えてくれたので読んでみた。 

一読したとき、コンプラ担当からこれは独禁法上ヤバいと指摘されて、経営陣の多くがメールを削除したことが、デジタル・フォレンジック(注)により明らかにされたという箇所に目が行ってしまい、よくやってくれたと褒めたい気持ちになった。

(注):デジタル・フォレンジック  パソコンやスマホに保存されたデータ、

削除されたデータも復元して分析する調査手法。 

 

  SOMPOホールディングス(以下SHDと略す)は、2024年1月にビッグモーター事件についての外部調査委員会の調査報告書を公表している。目を通したが、何十人もいる登場人物を、例えばSHDの櫻田会長をF1、SJの白川社長をA1と記載したりして、伏字表を載せてはいるが、誰が何をしたのか非常にわかりにくいモノだった。

 

 その反動からか、6月のSJのモノはすらりと読めたので好感が持てたのかもしれない。 

 しかし、読み返すうちに、新たな思いが湧いてきた。 

 メールを削除したこと以外、書かれている内容のほとんどは金融庁検査報告で述べられていることであったり、ネット上で指摘されていることではないか。

 

  この十数年、不祥事が発覚すると第三者委員会とか外部調査委員会を作るのが、流行っている。日弁連は、第三者委員会についてのガイドラインを作っている。 

これらの調査報告書にはまともなものもありはするが、かなりひどいものも多いようだ。久保利英明弁護士を中心に弁護士・ジャーナリスト・研究者ら有志の9人で、「第三者委員会報告書格付け委員会」が作られ、年に何本かの調査報告書を格付けしている。「A,B,C,D」の4段階で評価し、内容が著しく劣り、評価に値しないものについては「F」(不合格)となる。

 

  この格付け委員会は、SHDの1月の報告書を評価しその結果を、1月25日、同委員会のHPに公表している。4人が「D」、4人が「F」(不合格)である。(1名は評価に参加せず) 各委員の評価理由などは、「議論のポイント」として1ページ、「個別評価」として各3~4ページのものがHP(http://www.rating-tpcr.net/)に公表されている。 

  特に気になったのは、「外部調査委員会」なるものの正体である。格付け委員会は、「日弁連ガイドラインに準拠するものかどうかの記載がない」と指摘しており、さらにネット上には、「スクープ!櫻田CEOと社外調査委の『密会』疑惑が浮上」という記事もある。

「聞き捨てならない噂が飛び交っている。調査委のメンバーと櫻田氏が『密会』した。しかも、調査委が聴き取りのために呼び出したのではなく、櫻田氏が呼びつけたというのだ。」「編集部はSHDに質問状を出し、事実関係を尋ねた。同社は『密会疑惑』について『個別の内容についてはお答えを差し控える』と答えた。」(https://facta.co.jp/article/202312003.htmlより)

 

  事実かどうかは定かではない。しかし、このような指摘があるのであれば、この6月の公表の際、SJの新社長とSHDの新CEOがメッセージを出しているのだから「密会疑惑」が間違いなら、そこで明確に否定すべきである。また「日弁連のガイドラインに「準じる」「準じない」も明確にすべきである。またこれらの点に触れていないということは、「外部委員会」の独立性、中立性、透明性に重大な問題があるということだと思う。

 

  SJの6月の「外部調査委員会報告書」が審査されたらどんな評価がつくのだろう、と気になる。公表からすでに1カ月以上経っているが、格付け委員会がSJのそれを俎上に挙げているという話は伝わってこない。1月の場合、SHDが公表して10 日ほどで、格付けを公表している。久保利英明弁護士らの格付け委員会はもうSJやSHDのモノは評価対象にする価値すらないと判断したのではないか。 

  カッコつきの「外部調査委員会」は、大手弁護士事務所や検察上がりの弁護士、監査法人などのおいしいビジネス(世間を欺く悪徳ビジネス?)になっているのかもしれない。

この点については、別の稿で取り上げてみたい。