「核兵器不使用」の約束を 原水禁世界大会近づく
いまこそ問われる日本の役割
ICAN 川崎哲さんに聞く
今年も8月に原水爆禁止世界大会が開かれます。ウクライナや中東の戦火はやまず、核兵器の実戦配備が増え「人類史上最も危険な時」とも指摘されます。来年は被爆80年。まずは「核兵器不使用」を核保有国に約束させ、核軍縮に道筋をつけるため、唯一の戦争被爆国である日本の役割が重要さを増しています。
「明らかな核軍拡が2018年から始まっている。核の現代化、近代化が進んでいる」。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲さん(写真)はこう話します。
長崎大学核兵器廃絶研究センターによると、世界の核弾頭の総数は1万2120発。2013年から24年までに5180発(約30%)減少しました。しかし、作戦配備や、将来の使用を想定して貯蔵されている「現役核弾頭」は9583発あり、18年以降増加に転じています。
そのうちの84%をアメリカとロシアが保有。中国や英国、イスラエル、北朝鮮などほとんどの核保有国が「現役核弾頭」を増加させています。
核兵器の性能・威力を強化する「近代化」や、使用のハードルを下げる「小型化」も進んでいます。
●「死者260万人」
核戦争のリスクも高まっています。スウェーデンの研究機関は実戦配備された世界の核弾頭が昨年から60発増加したとの報告書をこのほどまとめました。「人類史上最も危険な時」と警告しています。
ウクライナ侵攻を続けるロシアは戦術核兵器の演習を実施。核兵器使用の可能性に繰り返し言及しています。ガザ侵攻を続けるイスラエルも、閣僚が核兵器使用を「選択肢の一つ」と主張しました。戦火は隣国のレバノンにも拡大の様相です。
核不拡散条約(NPT)は核兵器保有を米ロ英仏中に限定する一方で、核保有国には「核軍縮」の努力を義務付けています。その核保有国が非核保有国を侵攻し、核で威嚇するという異常事態です。(イスラエルは非締約国)
東アジアも例外ではありません。アメリカやイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の提供を決めるなど「対中国包囲網」を強めています。日本は先端技術分野で協力予定です。
長崎大学核兵器廃絶研究センターなどのグループがまとめた報告書では、台湾をめぐり中国と米国が戦争になった場合のシミュレーションを行っています。
それによると、核兵器が24発使われると想定し、直接の死者は260万人、さらに放射線が原因のがんで亡くなる人が最大83万人に上ると推計しました。
「台湾有事は日本の有事」と述べた自民党副総裁がいましたが、非常に危うい認識だと言わざるを得ません。戦争回避のための努力こそ必要です。
●被爆80年に向けて
川崎さんたちは「核兵器の不使用を確保することが現在の最重要の課題」と指摘します。核兵器の非人道性を強く訴え、使用を許さない国際世論をつくるためにも「日本の役割は重要」と強調します。