藤村博之JILPT理事長   「会社の論理に乗らないこと」


  独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の藤村博之理事長が11月、連合の春闘討論集会で行った講演が関係者の間で反響を呼んでいます。

 藤村氏は「2000年以降、賃上げ(定期昇給込み)が2%を下回るようになった。これを異常だったと総括することが必要。労働組合があまりに経営側に寄り過ぎていたのではないか」と問いかけました。

 日本の労働組合の良さは「是々非々の態度で経営側と臨むこと」だったが、経営指標の数字を議論するようになり、変わってきたといいます。「数字を議論すれば勝敗は見えている。それが経営側の仕事なのだから」と苦言を呈しました。

 特に90年代以降、経営側は「国際競争に勝つためには人件費を増やせない」とし、労組が物わかりよく応じ続けたと述べ、「それが日本企業の競争力を落としたのではないか。コスト以外の競争力を高めるべきだったのに、経営側にコストで競争できると錯覚させた」と指摘しました。

 25春闘について、藤村氏は生活必需品の高騰を踏まえた高い要求を提言し、次のように述べました。

 「経営側は要求の根拠を聞いてくるだろう。その時には『その額の賃上げが欲しい』と、ただそれだけを言えばいい。(企業経営に関する)数字を議論するより、その方が強い。ある組合がそうしたところ、会社の論理に乗って来ないので経営側は大変困ったそうだ。結果、組合の想定より高い回答が出てきた」「一番まずいのは経営側に忖度(そんたく)して何も言わないことだ。要求しないと、何も始まらない」