雨宮処凛の「世直し随想」
令和の百姓一揆
あまみや かりん 作家・活動家。フリーターなどを経て2000年,自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。『生きさせろ! 難民化する若者たち』(07年,太田出版/ちくま文庫)で日本ジャーナリスト会議賞受賞。
「農家を守れ!」「百姓守れ」「欧米並みの所得の補償を!」3月30日、東京の街に、そんなコールが響き渡った。この日開催されたのは「令和の百姓一揆」。
昨年夏、スーパーから米が消え、政府は備蓄米を放出。しかし、今も米不足は続き、高値が続いている。一方、農家はと言えば、離農者の増加に歯止めがかからないのだという。その理由は「時給10円」と言われるほどの低収入。そんな状況を受け、農業者たちが「もう百姓一揆しかない!」と立ち上がり、この日、デモが呼びかけられたのだ。
集合場所の青山公園に行くと、そこには立すいの余地もないほどの人、人、人。そこから突き出す「新潟県」「香川県」「鳥取県」「北海道」などののぼり。全国から農業者が集まっているのだ。その脇には、「令和の百姓一揆」という旗をつけたトラクター。赤や青や緑の大きなトラクターがエンジン音をうならせ、出発を待っている。
そうして午後2時半、30台のトラクターがほら貝の音とともにデモに出発。その後に3200人のデモ隊が続く。参加者が掲げる「い草」製のプラカードには、「百姓滅び 民飢える」「農業で後継ぎできる農政を!」「食料自給率を上げろ!」「怒れ農民」などの言葉。
デモ隊は、到着地点には4500人にまで膨れ上がっていたという。
この4月からさらに上がった物価。そして異常気象や戦災の影響により、いつ起きてもおかしくない世界的な食料危機。とにかくこの日、声は上がった。国はどう答えるのか、注視していきたい。