雨宮処凛の「世直し随想」

 

 

     戦後百年へのカウントダウン

 


 あまみや かりん 作家・活動家。フリーターなどを経て2000年,自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。『生きさせろ! 難民化する若者たち』(07年,太田出版/ちくま文庫)で日本ジャーナリスト会議賞受賞。


 

 2025年が始まった。なんと今年は「昭和100年」であり、「戦後80年」だ。

 そんな記念の年、私は「戦後100年へのカウントダウンを始める年」になれば……と夢想している。

 まがりなりにも80年、戦争をしてこなかったってすごいことだと思うのだ。

 特に私たちは3年前の2月、ロシアによるウクライナ侵攻を目撃し、また23年10月から、イスラエルによるガザへの猛攻撃を見続けている。

 現代の「戦争」はSNSのタイムラインにリアルタイムで現れる。爆撃された街、子どもの亡きがらを抱えて泣き叫ぶ親。SNSによって、「戦争」は恐ろしく「近い」ものとなった。見て見ぬふりなどできないほどに。

 そんな国際情勢の中で迎えた戦後80年を、私たちはもっともっと大々的に寿(ことほ)ぎ、世界にアピールしていいと思うのだ。なぜなら、経済大国でなくなりつつある日本に誇れるのはもうそれくらいしかない。だからこそ、私たちが率先して「戦後100年へのカウントダウン」を始めるのはどうだろう。「戦後100年まであと何日」と全国の商店街なんかに貼り出すのだ。都庁のプロジェクションマッピングもそれに変えてしまえばいい。

 そんな光景が全国に出現したら……。政治家たちは戦争はもちろん、軍事費を上げるとかも言い出しにくくなるだろう。選挙公約にだって「戦後100年を目指します」とか入れざるを得なくなるかもしれない。

 年のはじめ、そんなことを夢想してニヤけている。